2013年3月21日木曜日

橘玲 『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』

最近評判のアベノミクス。
経済学者はその効果(もしくはリスク)について、明けても暮れても百家争鳴。
僕はお金の話が苦手なので、果たして誰が言っているのが本当のことなのか、さっぱり分からない。
そんなとき、橘玲さんが新刊を出した。
それが本書『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』だ。

橘玲さんは、最近でこそ行動経済学や社会学全般に手を広げた著作が多いのだが、もともとは外貨や証券による海外資産でのリスクヘッジを提唱する著作が多かった。
そういう意味では、久しぶりの資産運用に関する著作だ。
だが、本書は単なる資産運用のハウトゥ本ではない。
アベノミクスの目指すところと、それが失敗に終わった時のシナリオを提示し、それに合わせた段階的資産運用方法が解説されている。
つまり、アベノミクスの平易な解説書でもあるのだ。

正直なところ、僕は資産運用に興味があまり無いので、橘玲さんの資産運用関連の著作は読んだことが無いのだが、行動経済学関連や社会学関連の著作はひととおり読んでいるし、ブログも読んでいる。なので、著者がどのようなスタンスの人なのかを一定程度理解しているから、本書に書かれた内容もどう理解すれば良いかが分かるので、安心して読める。
これが、よく知らない証券会社上がりの経済評論家の書いたものなんて、どういうスタンスなのかを知らずに読んだら、こっちが痛い目に遭ってしまう。

もちろん本書は、リスクに対する対策を解説した本であるので、国家財政が破綻するシナリオも提示されているのだが、その危機感をいたずらに煽るのではなく、あくまで可能性の一つとして提示するに留められている。実用書として非常に良心的な作りになっていると感じられた。

橘玲さんの著書は、本書も含め、非常に細かくロジックを積み重ねていくので、文章に派手さは無い。その分、初学者にも分かりやすい。
本来、学問はこういう言葉で語られるべきなのだと、つくづく思う。



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