2013年3月9日土曜日

佐藤優 『佐藤優のウチナー評論』

鈴木宗男氏に連座して外務省を追われた佐藤優氏は、現在はさまざまなメディアで精力的に情報発信をする作家に転身した。
その情報発信スタンスは、氏が外務省官僚であったころに学んだインテリジェンス(情報収集・分析)と、官僚になる前から取り組んでいる神学やマルクス経済学をベースにしている。
論考は常に鋭く、緻密だ。

そんな佐藤氏の著作は硬軟織り交ぜて多数世に出ているが、僕はそのうちの10作品程度をすでに読んでいる。
他の作品は今のところ、まあ、読まなくてもいいだろうと判断して手をつけるつもりはないものだ。

Amazonで出版情報を見ていたらもうすぐ新作が出るようなので、それを心待ちにしていたのだが、先日沖縄に所要で出かけた際に空港の書店で、これまで見たことのない佐藤氏の著作を見つけた。
表紙に佐藤氏の顔写真がデカデカを使われているのだが、それ自体は氏の著書では珍しいことではない。問題は、その表紙の写真が、やや粗いのだ。
この粗さはもしかして、ローカルな出版社が講演集でも編んで出しているのか?と思って手にとってみると、出版元は琉球新報社。沖縄のローカル新聞社だ。
内容は、その琉球新報社が発行している琉球新報に連載された、佐藤氏の評論をまとめたものだった。丁寧に、著者本人によるまえがきとあとがきも添えられている。

その本のタイトルは『佐藤優のウチナー評論』。

Amazonを見たら、データはあるものの取り扱いは無かった。

内容は、母親が沖縄の出身である著者が、自身の中の沖縄の血を沸き立たせながら、沖縄が現在(連載当時)立たされていたさまざまな問題に対しての処方箋を熱く書き綴っている、という感じである。
マニアックな知識を前提として書き進めるスタイルは著者の他の著書と変わらないが、沖縄ローカルの新聞での週一連載であることを意識してか、多少は解説的な言い回しも多いような気がする。
その代わり、沖縄に関するような話は、ヤマトンチュにはピンと来ないような話も無解説だ。
たとえば、「おもろそうし」とか「八八八六」とか。
きっと沖縄の人ならば解説無しでピンとくるカルチャーなのだろう。

主なテーマの1つとして、沖縄が政治的に割を食っている現状を改善するための提言、特に中央官僚と戦うための処方箋にかなりの項を費やしている。
連載当時、まだ籍は外務省に残っていた著者だからこそ、独自の視点として語るべきことを語ったのだろう。

本書を読んで、東京在住の中年サラリーマンである僕には、具体的な行動に落とし込めるような示唆は現時点では何も無いのだが、沖縄の置かれた状況・立場を理解するという意味では大いに役立ったと思っている。
少なくとも在京大手の新聞社が報じる沖縄の姿よりも、より体系だった理解が促される内容であった。



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