『ローマ人の物語』文庫版38冊目。
内容は、大帝コンスタンティヌスが没した後の皇帝コンスタンティウスの治世について語られている。
ローマでは完全に時代が停滞して、終焉への序章がすっかり根付いた感じの時代である。
この「キリストの勝利」の冒頭では、そんな世相を反映しての市民の暮らしについて、以下のとおり描かれている。
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独身で、子もない。とはいえ、彼だけが特別ではなかった。
帝国の将来に希望がもてなくなった時代、一生を独身で通すものが珍しくなくなっていたのである。
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単行本が出版されたのは2005年なので、今ほど独身男性の増加が騒がれていない頃である。
(ちなみに、「草食男子」という言葉の産みの親である『平成男子図鑑』が単行本化されたのが2007年のことだ。)
これを現代日本を言外に想定しながら描いたのだとすれば、塩野七生恐るべしである。
なお、著者はコンスタンティウスのことをこのように評している。
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この三十代に入ったばかりのローマ帝国最高の権力者は、心配事が一つでも残っていると動きが鈍ってしまう性質だった。本質的に小心者だったのだろう。
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なんだか、自分のことを言われているようで心が痛むところである。
だからといってコンスタンティウスに感情移入するようなことはないのだが。
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