2013年4月7日日曜日

エリック・ワイナー 『世界しあわせ紀行』

僕は、あまり海外旅行には興味が無い。

登山が趣味なので、海外の山に行きたいとは思うが、街には興味が無い。
なので、山以外だと、せいぜい極端な場所(密林とか砂漠とか氷原とか)の紀行しか、普段は読まない。

が、『世界しあわせ紀行』は、うっかり買ってしまったので読んだ。
それは、帯に高野秀行さんが
「こんな素っ頓狂な本、私が書きたかった」
という惹句を寄せていたからだ。

高野秀行さんが「書きたかった」というぐらいだから、僕の好きなジャンルではなさそうだけれども、もしかしたら面白いのかもしれない。
やたら分厚いので、趣味が合わなかったら悲劇でしかないのだが、それでもエイヤッ!で買ってしまった。

結論から言うと、あまり趣味には合わなかった。

本書では、ジャーナリストである著者が「幸せってなんだろう?」という疑問に答えを見つけるべく、世界各国で「あなたは幸せですか?」と聞いてまわるという内容だ。
これだけ書くと身も蓋も無いが、実際これだけである。

調査対象として、本書で著者が訪れた国は、幸せの対極に位置しそうだという理由で選んだ1ヵ国(モルドバ)と、著者の母国であるアメリカを含めて10ヵ国。
著者は、どの国についても皮肉った表現で描き出している。少なくとも、幸福な人はこういう物言いをしないだろうというところに、著者の表現方法の特徴があるように感じた。
中でも、モルドバについての章は、筆が踊っているかのような、イキイキとした筆致で、幸福よりも不幸が好きなんじゃないかと思わせるに十分な佇まいだった。

内容は、正直なところ各国事情の紹介に過ぎないような気もする。「幸福」ということをキーにしているが、結局はお国事情の表面をサラッとなぞっただけのように感じた。
文章については非常に軽妙でテンポもよく、ユーモアが散りばめられている。が、これが著者のものなのか、翻訳者のお手柄なのかは、僕には分からない。

ペシミスティックな笑いを求めるならば、本書は期待に沿うこと間違い無しだが、僕が読書に求めることとは少々異なるベクトルの作品のようだ。


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