『ローマ人の物語』文庫版39冊目。
この巻では、コンスタンティウスに反旗を翻し、結果、皇帝の座についたユリアヌスと、その死後皇帝の座を襲ったヨヴィアヌスの治世を描いている。
ユリアヌスは、コンスタンティヌスとコンスタンティウスによって推進されたローマ帝国のキリスト教化にストップをかけた皇帝であり、すでに38巻において副皇帝としての目覚しい活躍が描かれている。
が、23歳で世に出るまで幽閉状態で過ごしたユリアヌスは、やはり世事に長けていたわけではなかったかのように、39巻では描かれている。
若いうちから多くの人の中で揉まれて成長した人ではないユリアヌスが、人の心を見透かして上手く操るなどということは望むべくもないことなのであろう。
ユリアヌスによるたった19ヶ月の治世では、ローマ帝国のキリスト教化も蛮族化も、時計の針を戻すには至らなかった。
ユリアヌスの死後に帝位を襲ったヨヴィアヌスにより、ユリアヌスが発布した反キリスト教政策はすべて破棄されたからだ。
そのヨヴィアヌスも、たった7ヶ月で死亡する。
ここで、ユリアヌスとヨヴィアヌスのそれぞれの治世に対して割かれたページ数が大幅に差があることに注目したい。
19ヶ月の在位のユリアヌスに対して約120ページ。
7ヶ月の在位のヨヴィアヌスに対して約6ページ。
この差はなんであろうか。
著者の贔屓であろうか。
トピックスの量の差であろうか。
1つ言えることは、著者は、後世から「背教者」と不名誉な二つ名をつけられてしまったユリアヌスに対して、一定以上の同情と思い入れを持っていることは間違いないと思う。
それは、ページ数という定量的な尺度だけでなく、彼の失敗や死に対する、行間ににじみ出る無念の思いからも推し知れるところである。
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