2013年4月2日火曜日

佐藤優 『国境のインテリジェンス』

佐藤優さんは、僕が著者名だけで著作の購入を検討する作家の一人だ。
でも、全部を購入するわけではない。テーマによってはあまり興味の無いものもあるので、ある程度は目次を見たり、パラパラとページをめくったりして考える。

正直なところ、『国境のインテリジェンス』についてはあまり購入するつもりはなかった。
同時期に観光された『新・帝国主義の時代』だけ買っておけばいいかなと思っていた。
その思いは、『国境のインテリジェンス』を買って読み終わった今も変わっていない。

佐藤優さんの著述業としての引き出しは、僕の知る限り
  • 日露外交
  • 外務省批判
  • インテリジェンス=情報収集、情報整理、人脈構築、交渉
  • マルクス経済学
  • 神学
  • 沖縄問題
  • 拘置所暮らし
というあたりが主なところではないかと思うが、本書『国境のインテリジェンス』は、この中で特に、外務省批判の部分が強く出ている著作ではないかと思う。
佐藤優さんが政治・外交について、連載形式で広いオーディエンスを想定して短めの文章を連載する場合、思いが凝縮されるのか、語気が強くなる傾向があり、かつ、その語気の強さに反比例するように論理の積み重ねが薄くなる。論理展開として性急の感を否めない。

僕は佐藤優さんの、緻密なロジックの積み重ねが好きなのだ。
『同志社大学神学部』や『紳士協定 私のイギリス物語』などのような、ゆっくりとした展開の中で思索を重ねていくような、腰の据わった作品が好きなのだ。
アジテーターとして佐藤優さんを求める向きが世間的もあるのは確かなのだろうし、本書の元となった連載が『アサヒ芸能』であったというのも大きな要因なのだろうけれど、僕としてはやや物足りなさを禁じえない。


先にも述べたが、同時期に発売となった『新・帝国主義の時代』のほうが、きっと深い考察が披瀝されているに違いなく、まだ読み始めたばかりだけれど、期待している。
が、実際に書店で前面に押し出されているのは、『新・帝国主義の時代』ではなく、『国境のインテリジェンス』であることが多いように感じる。
それもまた、残念な気がする。

『新・帝国主義の時代』を読み終えた時点で、改めて本書との比較を考えたい。


0 件のコメント:

コメントを投稿