2013年4月18日木曜日

塩野七生 『ローマ人の物語40 キリストの勝利 (下)』

『ローマ人の物語』文庫版40冊目。

皇帝テオドシウスの治世が主たる範囲だが、テオドシウスそのものよりもむしろ、キリスト教の動向がメインで描かれている。

なにしろ、テオドシウスの治世には、ローマ帝国においてキリスト教の国教化が著しく進んだ時期である。というよりも、テオドシウスがミラノの司教アンブロシウスにコントロールされた結果、古来からのローマの神々に対する信仰を「邪教」認定したのだ。

テオドシウスの前の皇帝は皆、死の直前になって初めてキリスト教の洗礼を受けていたのだが、テオドシウスだけは、48歳で亡くなる直前ではなく、30代のうちに洗礼を受けていたのだ。
このため、神の教えを説く司教であるアンブロシウスに逆らうことのできない信徒の立場となったテオドシウスは、中世の「カノッサの屈辱」のような公式悔悛を強いられている。

そのような経緯の末、テオドシウスの治世には、ローマ帝国の都市の至るところに飾られていた彫像が、偶像崇拝の対象であるとして破壊された。
つくづく惜しいことである。


次巻以降は、単行本ではついに最終巻となる部分に差し掛かる。


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